翡翠色のお客さまと

 

 

この夏、蝉がアスファルトの上でひっくり返っているのをみると
せめて最期は土に戻りたいかもしれないと
そっと近くの木の下に届けることが続いていて

そしたら住んでいるマンションの廊下にも
今年は(特に)たくさん動かない蝉がじっとしているから
また階段を下りて一階の植林まで、、
という夏なのだけれども

たまに動かないその子たちの足にひとさし指を近づけると
足がまだ力づよく指につかまる子もいて
ひときわ愛おしさを感じてしまう

先日部屋の扉の前に居た子は
やっぱり指にしがみつける力がまだ残っていて
そしてこちらはアイスを食べていたものだから
いろいろがいろいろで(アイスが溶けたり荷物を抱えていたり指には蝉さん)
急いで扉を開けて
部屋のベランダのハイビスカスにつかまってもらった

そしたらその子は外で夜中鳴き始めて!
これはご近所がびっくりしやしないかと一瞬思ったけれども
最期のいのちの瞬間まで聞き届けたいなと
横になりながら夏の夜をすごした

ちいさないのちの営みにレンズが向くと
あちこちから急にあたらしいコンタクトが始まる

そして今日は帰宅すると
とてもうつくしい青緑色の蛾が部屋の扉の前にじっとしていた
入るに入れずあなたはだあれ?とそっと近づくと
今度はしゃがんだ膝の上にぴゅんと乗っかってきてじっとしている

胴体は白くてつぶらな目がすごくかわいい
しばらく見惚れていると
いつしかパッっと飛び立っていった

あの翡翠のような羽根のお客さまは
後で調べたら「オオミズアオ」といった

 

とても、とても印象的なモーメント